彼女の話

どんよりからの突破口

投稿日:2017年6月11日 更新日:

彼女は人に何かしてもらうのが苦手だ。
何かをもらう、とか手伝ってもらう、とか。
それはよくあるように人の手を煩わせるのは申し訳ないと思うから、というわけではなく、
できればそういったことはしてほしくない、のである。

なぜ嫌なのかは分からないが、とにかくそういったことがあると少しどんよりするのだ。
いや、少し感謝して大分どんより、が正しい。


例えば彼女の家の天井はかなり高く、電球を替えるのが非常に困難だ。
脚立もないし、もしあってもそもそも彼女では届かない。
しかし彼女の職場の人はおそらくそれを聞けば誰かが来てやってくれるだろうと思われる。
世話好きや面倒見のいい人がいるからだ。
ひとり暮らしで男手がなく困った時には声をかけてくれ、と言ってもらえているくらいだ。
彼らと彼女の関係は良好で、頼めない間柄ではない。
でも彼女は頼まない。
その時だけの関係で終わる業者に電話し、お金を払って済ますだろう。

例えば結婚式に招待される。
90%以上どんよりが予想される。
その日彼女が家で一人で居させてもらえるならば90%お祝いすることができるのだが、
出席となればその一か月前からもう憂鬱の嵐でおよそ健全な精神生活を送ることは諦めなければならない。
どちらにせよ残りの10%は、5%招待への感謝、残りの5%は寂しさ、などに配分されるだろう。
(ちなみに彼女は大人になって一度も結婚式に出席したことがない。)


彼女にとっては何もしてくれないことが一番なのだ。
結婚式も事後報告がありがたい。
なんという捻くれたやつだ、と思うが彼女はそういう人なのである。


彼女自身、それで何が悲しいかと言うと
いつもどんよりが先行して感謝の気持ちがあまりにも早くフェードアウトしてしまうこと。
自分は誰かに心から感謝するということをしているのだろうか、と不安になること。
そうできないほど自分のことばかり考えていること。

彼女は自分でも気づいているのだが、
そもそも彼女自身がその場の雰囲気とか義務感抜きに
誰かに手を貸すとか誰かのために何かをする、とかいった経験がかなり貧弱だという事実がある。
そして、自分にも何かができる、という突破口を探し求めているという事実も。

-彼女の話

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