彼女の話

それが問題だ。

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最近の彼女はあまり考え込んではいないようだ。
やることがたくさんあるから考えこむ暇がないのである。

思考のループにはまって抜け出せなくなったとき、よく聞く提案。
運動をしろ、とか
好きな音楽を聴け、とか
思い切って旅行に行ってみよう、とか。

どれも良いアイディアだ。


しかし彼女は考えていることがあるとき、他のことをしない。
気になることがあるときは他のことなんてまず思いつきもしないからだ。


やることがたくさんありすぎて、思考のループならぬ思考のレイヤーに捕まった今の彼女は
ループに流されている時とはまた違う窮屈さを感じている。
この薄く膨大な層のどこにも自分はいない。
今は他の多くのことを広く浅く考えている。
そして想像する。
みんなは世の中をこんな風に考えて生きているのかもしれない、と。
たくさんの必要不可欠をまんべんなく均等に考えてそれなりの答えを出して生活する。


「目的」
「レーゾンデートル」
「自己概念」
「自分は何者であるのか」


そんな何かのトンネルに頭がハマって動けなくなることなどないのだ。

彼女は小さな下水溝の塩ビパイプにその大きな頭をはめ込んで抜け出せなくなったネズミの自分を思う。


ここにいると安心。


広く浅くたくさんのことを考えていると、いつのまにかそこに自分はいなくなる。
思考のループは一度はまってしまうと確かにやっかいだ。
それはいつだって答えがない。だから苦しい。涙が出る。
でもそれはそこに自分がいるからだ。
苦しい、と感じる自分がいるのだ。
自分、が目頭を熱くして涙を流すのだ。


幾つもの思考の渦に流されようとも、
幾重もの思考の層に挟まれようとも、
そこに自分はいるのか。
それが問題だ。



-彼女の話

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