彼女の話

そこにこころが

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彼女は手紙とかLINEとかメールが苦手だ。
そこに心があるかもと思うと開くのがいつも億劫になる。

彼女は時節のあいさつを大切に思っている人で、
そういう時期になればハガキをだす。
でもお別れの手紙とかお礼の手紙とか謝罪のメールとか
そういったものをもらってもいつもいつまでたっても開かない。

お別れの手紙に書いてあることはまあ大体予想がつくのではないかと思うのだが、
これまでの感謝の気持ちとか健康への気遣いとか今後への激励とか
恐らくはそういったことが書かれているのだ。
別に彼女へ最後の最後に文句が書いてあるとかいうわけではない。

メールを見たとき、彼女はパッと開いて長文と見るともう閉じてしまう。
「ああ、なんだか、なんだろう。なにかたくさん書いてあったな」
と思いながら、仕事でない限りそのまま数日放置してしまったりする。

それが良いことであれ、悪いことであれ、
あまりたくさんの心は受け止められないのである。
たくさんの連なる文字を見たとき、重なる便箋の厚みに触れたとき、
それが書かれた時の感情をも一緒に送られてきたような気がして
単純に彼女はどうしていいか分からず「ああ」と一旦置くしかないのだ。

手紙の場合数日すると、それはきっと悪いものではない、と思い開く。
ちなみにメールの場合はこれに反して「いいことじゃないことが多い」らしく、
それはさらに据え置かれることになってしまう。
カンの良い彼女はなんとなく内容に予測が立ち、
読む前からどんなことを返信したらいいだろうかと憂鬱になったりしている。

手紙やメールは分かりやすい例だが、「こころはどこにでもある」。
そう思うと彼女はどこにいても
膨らみ続けるたくさんの風船に挟まれて押しつぶされるような気分になってくる。
その風船たちはすごく分厚くて強靭で絶対に割れることなく、
いつか自分の臓器のすべてをつぶしにかかってくるような気がしてくるのだ。

-彼女の話

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