彼女の話

くろくなる光

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「白いキャンパスに光を描こうとするとくろくなる」

彼女は自分が塗り上げたその黒さに絶望する。



久しぶりに会った彼女はひどく痩せていた。
まるで地球上の重力すべて集めましたといった重さの鉄板によって
きれいに上からプレスされたかのように彼女はペラペラになって横たわっていた。


僕はその姿をみて、しまったと思った。
彼女はすっかりまた・・・


彼女を断続的に襲うとんでもない孤独と不安。
何が引き金となるのかいつも分からない。
徐々に彼女を蝕んだり、後ろから突然襲ったりする。


こういう時の彼女は僕から見ても彼女と言い難い。
彼女と言葉を交わしていても、違う誰かと話しているようなおかしな感覚に陥ることがある。
それは俗にいう二重人格とかいうものではなく、
彼女が自分自身に対してひどく客観的な他人行儀な彼女になってしまうのである。
それは例えば
”ごはん何を食べたんだい?”と問うて、
「ああ、食べたんだと思うけど、えっと・・・すごく眠いみたいで」
といった端的なものから、
いつもに増して彼女の使う言葉や表現が独特になってしまうこともある。
僕はいちいち頭の中で?を繰り返してしまって会話が苛立たしくならないように気をつけないといけなくなる。
彼女は最初から誰かに理解してもらおうと思って話しているわけではないから
分からないのは当然かもしれないが。


以前彼女はこんな状態の自分を振り返って
頭に一膜かかっているようなのだと話したことがある。
何かが覆っているから、それをズリズリ頭から剥ぎだしてしまえば一気にスッキリしそうな気がするんだけど、と。
膜は頭だけにとどまらず、そのうち彼女の全身を包んでいく。


次に行ったときには彼女の体はひどくしなって、ぐにゃりと腹部だけが沈んでいるようだった。
紙みたいにペラペラのはずなのに覆った膜の重さで城の地下まで突き破っていくかに思えた。


無気力に守られた彼女は、もう起き上がろうともしない。

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